車が真っすぐ走らないと自動ブレーキが効かない!?意外と知られていない「スラスト角」の重要性

国土交通省は、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の新車装備の義務付けを、2021年11月以降の国産車の新モデルから段階的に実施するとしています。車の修理にあたっては、必要に応じて自動ブレーキのデバイス(カメラやセンサー)を脱着することがあり、そうした場合、エーミング作業(校正)が必要となります。

ただしエーミングは、自動車が「真っすぐ走ること」が前提条件となっています。
事故で真っすぐ走らなくなった車は、エーミングだけをしても無意味(むしろ危険)です。
このコラムでは、車が「真っすぐ走らない」状態が危険な理由を解説します。

エーミングとは?

引用元:株式会社イヤサカ http://www.iyasaka.co.jp

エーミングは、自動ブレーキなどの先進安全機能が、正しく作動するために必要な調整・校正作業のことです。
自動ブレーキなどのカメラやセンサーは、事故などによって正常に作動しなくなることがあります。
事故の修理後(バンパー、グリル、フロントガラスの脱着)も正常に作動するように、
エーミングによってセンサーの調整や校正をする必要があるのです。

ちなみに、エーミングが必要となる作業には以下のようなものがあります。
・超音波センサーのついたバンバー(レーダー・センサー)
・フロントガラスの交換(カメラ)
・フレーム修正を伴う板金塗装(レーダー)など

自動ブレーキは「車が真っすぐ走る」が大前提

自動ブレーキのカメラとセンサー

引用元:トヨタ ハリアー https://toyota.jp/harrier/safety/

自動ブレーキのカメラやセンサーは車体に取り付けられています。
カメラやセンサーは、車体が真っすぐ走るときに正常に作動するように設計されています。

もし事故で車体が損傷し、車が真っすぐ走ることができない「異常な状態」では
自動ブレーキのカメラやセンサーは、誤作動を起こす危険性があります。

言い換えれば、いくら自動ブレーキのカメラやセンサーが正常でも
実際の車が斜めを向いて走っていたら、それは無駄(むしろ危険)ということです。

適切なアライメント調整が必須

四輪アライメントテスター

引用元:株式会社アイペック
https://www.ipec-j.co.jp/products/rav4wtester/

自動ブレーキのエーミングの前に、前提として車が真っすぐ走ることが重要です。
そのために必要なことは、「アライメント調整」と呼ばれる作業です。
アライメントは、車体や車輪の位置や角度などを測定することを言います。

人間の身体に例えるなら、アライメントは「身体測定」のようなイメージです。
(アライメント調整は、「整体」でしょうか)

アライメントには様々な測定項目がありますが、自動ブレーキの作動に関して特に重要になるのは、
車体の中心線と進行方向のズレを示す「スラスト角」です。

スラスト角とは

エーミングとスラスト角

引用元:にしにほんツールショー特設ページ
https://sites.google.com/site/specialpagejp/aiming

スラスト角とは、車の「中心線」と「進行方向(スラストライン)」の角度の差(ズレ)を言います。
スラスト角(ズレ)は、0度(ゼロ)に近いほど理想的です。

スラスト角(ズレ)が大きくなると車が斜めに進もうとします。
ハンドルのセンターが狂い、常にハンドルで微調整しないと直進しません。
車の進行方向に影響するのは後輪のスラスト角です。

自動ブレーキにも異常が起こる危険性

スラスト角が狂っていると、車が直進しないこと以外にも、自動ブレーキにも問題がでてきます。
前述のように自動ブレーキのカメラやセンサーにいくら問題がなくても、
車の中心線や進行方向がズレていれば、誤作動を起こす危険性があります。

これも人間の身体で例えるなら、両目の視力(カメラやセンサー)は正常でも、
右側に顔を向けながら前方に走っているようなイメージです。

前方には何もないのに、右側に障害物を見つけたから止まってみたり、
前方に障害物があるにもかかわらず、右側には何もないから走り続けるので衝突します。

国産車は後輪のアライメント調整ができない!?

残念ながら現行の国産車の多くは、後輪のアライメント調整機構が付いていないことがほとんどです。
自動車事故で後輪の足回りにダメージを受けた場合に、後輪のスラスト角が狂っても、
事故直前の状態に車を復元修理することは、技術的に不可能ということになります。

スラスト角の異常な車は、致命的です

スラスト角が正常な範囲に復元できないということは、
外観上は修理できたとしても、車が安全に直進しないリスクが残ります。

スラスト角に影響があるような事故車の場合、
当社の修理方針である復元修理の4原則の
「性能の回復」および「安全性の確保」が担保できません。

当社ではスラスト角が正常に復元できないと判断した場合は、
技術的な全損とみなし、基本的に修理することはおすすめしません。
安全性を考えて、お車の乗り換えも検討された方が良いでしょう。

事故による損傷範囲を証明するためのアライメント

ご自身や相手方が任意保険を使われる場合には、
事故で受けたと考えられる車両の損害範囲を証明するために、
主に2種類のアライメント計測が必要になります。

ボディ・アライメント

三次元計測機で、正規のボディ寸法との誤差を計測します。

ホイール・アライメント

四輪アライメントテスターと呼ばれる計測器で、足回りに狂いがないか計測します。

事故車の損傷範囲をデジタル計測するPointX-Ⅱ

pointx
当社はスウェーデンのCAR-O-LINER(カロライナ)社が開発した、自動車の3次元計測機
「PointX-Ⅱ(ポイントエックス2)」を2020年より新潟県で初めて導入しました。

カロライナ社が独自に実車計測したボディ寸法(自動車メーカーと同等以上の品質)と照らし合わせ、
その誤差をミリ単位の精度でデジタル測定します。
PointXは、三次元計測機として保険会社各社からも認知されており、
事故による車の損傷を立証するための客観的なデータになります。

次世代の安全技術にも、車体整備の技術が必要

自動ブレーキのような先進安全技術がどれだけ発達しても、
その土台である車体が狂っていては、かえって危険な状態になってしまうのが現代の車です。
万が一の事故で車を修理された際には、必要に応じたエーミングと併せて、
適切なアライメントが行われているか確認されることをおすすめいたします。

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