損害を立証するのは、車屋でも保険屋でもなく、被害者です
この記事でお伝えしたいことは、ズバリ見出しの通りです。
以前あなたが事故に遭ったとき、損害(車の修理費など)の立証を
修理会社や保険会社にまかせっきりにしませんでしたか?
法律では、交通事故の当事者である被害者が、損害を立証することになっています。
本来、保険会社に請求権があるのは保険契約者です。
身も蓋もないように聞こえるかもしれませんが、
車の修理工場は、保険会社との交渉が仕事ではないのです。
そもそも修理工場と保険会社は、何の契約関係もありません。
私たち修理工場は、交通事故に遭ったあなたをサポートする立場にあります。
一方で、修理工場があなたに対してできることは、あくまでサポートに限定されます。
「事故のとき1から10まで対応してくれるのが車屋じゃないの?!」と思われたかもしれません。
たしかに実態は、ディーラーや修理工場にまかせる方がほとんどではないでしょうか。
しかし全てをまかせた結果、正当な補償を受けられないという可能性も出てくるのです。
交通事故に遭うことは、人生で数える程度しかありません。
自分自身が交通事故の当事者にならなければ、ふつうは関心が起きないことです。
ただ、このコラムを読んで下さっているあなたは、
交通事故の加害者や保険会社に対して、不満や疑問があったのではないでしょうか。
もしかしたら現在進行形で困っている方もいらっしゃるかもしれません。
ぜひ、これから紹介することを頭の片隅に置いておいて下さい。
そして事故のとき、あなたの正当な損害の賠償請求の助けになると思います。
そもそも損害とは?立証とは?
聞き慣れない用語がたくさん出てきますが、
ここで「損害」「賠償」「立証」の意味を確認しておきましょう。
広辞苑ではこんなふうに書かれています。
損害(ソンガイ)
そこない、傷つけること。事故などで受けた不利益。損失。
賠償(バイショウ)
他の人に与えた損害をつぐなうこと。
立証(リッショウ)
証拠を示して正しさをはっきりさせること。
被害者が損害を立証しなければならない根拠
先ほど、「修理工場ができることはサポートに限定…」と述べたのには理由があります。
それは日本の法律(民法)です。
(法律と言われると少々とっつきにくいと思いますが、覚えておいて損はありません。
あなたの日常生活にも関わる重要な法律なので紹介させて下さい。)
もしあなたが交通事故にあったとき、あなたは事故の損害について、加害者に賠償請求することができます。
その根拠となる法律は「故意や過失による損害は、損害を与えた人が賠償しなさい」というものです。
民法第709条(不法行為による損害賠償)
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
この法律を車の物損事故にたとえて要約すると、
「車を傷つけたら、傷つけた人が車の修理費を支払って下さい」となります。
常識のある人であれば当たり前のことですが、次のことがさらに重要です。
民法第709条には”因果関係の立証責任”という解釈があります。
あまりピンと来ないと思いますが、噛み砕いて言うと
「損害賠償してもらうには、被害者が損害を立証して下さい」
という考え方になります。
つまり法律上は、損害を立証する責任は、被害者にある!としています。
立証するのは、事故の加害者でもなく、車の修理工場でもなく、保険会社でもありません。
被害者が損害を立証することの問題点
たとえば、あなたが車の運転中、信号待ちで追突事故にあったします。
追突されたあなたは、無過失(過失割合が0:10)の被害者です。
しかしながら、あなたが無過失であっても、あなたのことを誰かが勝手に助けてくれるわけではありません。
誰かが加害者に対して、事故の損害賠償を請求してくれるわけでもありません。被害者であるあなた自身が、
事故で損害が起きたことを示す「証拠」を集めて、加害者や相手側の保険会社に提出する必要があります。
ここでいう証拠とは、事故でケガをしたなら医師の診断書、治療したら診療報酬明細書、
車の損害額を算出するための修理見積書、車両の被害が分かる写真、被害車両の市場価格など、
あなたが事故でうけた損害が分かる資料のことです。
問題が起きるのは、あなたが自動車保険を使う必要のない無過失事故(0:10)の場合や、
あなたの過失割合が小さく(1:9~2:8など)、自動車保険をできれば使いたくない事故のときです。
相手側(加害者)が自動車保険に加入していれば、あなたは一人で相手側の保険会社と
事故の保険金について損害額を交渉(立証)する必要があります。
あなたが契約している自動車保険を使わないということは、
あなたが加入している保険会社は、事故の被害者であるあなたを助けてはくれません。
保険会社は営利目的の企業です
一般社団法人日本損害保険協会によれば、加盟する保険会社28社の
損益計算書を集計すると、当期純利益が6765億円(2018年度)になるそうです。
(https://www.sonpo.or.jp/member/gaikyou/ より引用)
当期純利益とは、その会社が一事業年度で支払うべきコストや税金を差し引いた「最終的な利益」のことです。
6765億円÷28社=1社あたり平均241億円の純利益と考えると、結構儲かっていることが分かります。
保険会社は利益を追求する企業です。
利益は、企業努力をしなければ生まれません。
保険会社の企業努力の一つが、保険金の支払いを減らすことです。
保険金の支払いが減れば、そのまま保険会社の利益に直結します。
表現は悪いですが、保険会社は違法にならない範囲で被害者を言いくるめて
保険金の請求額をできるだけ減額し、合意できるように努力するわけです。
相手側の保険会社との交渉で、被害者は知識・経験・資金力で圧倒的不利な立場にあります。
そのような力関係のなかで、被害者は保険会社との交渉をしなければなりません。
被害者がやるべきことは、損害の立証です!
ここまで読むと、民法709条が被害者にすごく酷なことを言っていると思いませんか?
繰り返しになりますが、被害者自身がその損害を立証しなければなりません。
過失割合がお互いにあって自動車保険を使う場合も、あなたが契約している保険会社は、やはり利益を追求する企業なのを忘れてはいけません。また個人的な見解ですが、被害者と加害者それぞれの保険会社で、保険金の支払い総額を減らすことができれば、保険会社同士はWin-Winというわけです。
「でも、損害の立証(証明)なんて言われても、どうすればいいの?」
おそらくこんなふうな疑問を抱いたのではないでしょうか。
まさしく、おっしゃる通りです。
損害賠償に関する法律、事故による損害の検証方法、車体修理の技術など・・・
立証の仕方を知っている方は、ほとんどいないと思います。
仮に自動車業界や保険会社に勤めていたとしても、知らない人の方が多いでしょう。
私たち一般社団法人事故車損害調査協会に所属する自動車修理工場は、
被害者の立証を全力でサポートする立場にあります。
次回のコラムでは具体的な損害額の調べ方についてご説明します。
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参考文献:一般社団法人事故車損害調査協会「損害保険のそもそも論」
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